ステロイドによる抗炎症作用

コルチコステロイドは自己免疫疾患、アレルギー、移植片拒絶などの有害な免疫応答を抑えるのに広く用いられている強力な抗炎症薬である。コルチコステロイドはステロイドホルモンであるグルココルチコイドの誘導体であり、コルチゾールの合成アナログ(類似体)であるプレドニゾンが最も広く使われている。
コルチゾールは体内の殆ど全ての細胞に発現される細胞内のレセプターを介して作用する。ホルモンの結合によって、レセプターは特定の遺伝子の転写を制御する。

コルチコステロイドにより制御される遺伝子は数多く存在し、異なった臓器で異なった遺伝子が制御されるために、ステロイド治療の効果が大変複雑になることは容易に予想される。
有益な効果は抗炎症作用であり、浮腫、体重増加、糖尿病、骨粗鬆症、皮膚の菲薄化など副作用も多く見られる。

コルチコステロイドの抗炎症効果は、①コルチコステロイドはサイトカイン、プロスタグランジン、一酸化窒素といった炎症性伝達物質の産生を抑制する、②それらは接着分子の発現を抑制して炎症部位への細胞の浸潤を阻害する、③コルチコステロイドは、白血球とリンパ球のアポトーシスによる細胞死を促進する。

病気をコントロールするためにコルチコステロイドを使用するときには、病気によって引き起こされる炎症の徴候を減らすことにより患者を助けることと、薬の毒性による副作用を避けることとのバランスを注意深くとることが必要とされる。

免疫生物学第5版 P.554-555

免疫生物学―免疫系の正常と病理

免疫生物学―免疫系の正常と病理

  • 作者: Charles A.,Jr. Janeway,Mark Walport,Paul Travers,Mark J. Shlomchik,笹月健彦
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