レジオネラ感染症

自然界の水系、土壌に広く生息するグラム陰性桿菌。
アメリカ、フィラデルフィアのホテルで1976年7月在郷軍人の会があり、そこで原因不明の肺炎が集団発生し、221名中29名が死亡した。感染源はホテル屋上の空調機の冷却塔水であり、エアロゾルとして飛散したものと推定された。
Fraser NEJM 1977;297:1189-1197

ポンティアック熱:インフルエンザ様の熱性疾患。肺炎には至らない。アメリカ、ポンティアックで初めて本性が確認されたことにより命名された。我が国では1994年に集団感染が報告されている。
森正直ら 感染症学会雑誌 69; 646-653, 1995

同じレジオネラ菌が、一方で肺炎をおこし、一方でインフルエンザ用の症状にとどまる理由は分かっていない。

一方不顕性感染の場合もあり、24時間風呂の利用者と非利用者の比較で、抗体陽性者の割合は、49.1% vs 18.1%であった。

レジオネラ肺炎患者の1/3は消化器症状(下痢、嘔吐、腹痛)
½は中枢神経障害がみられるが、理由はよくわかっていない。

下痢は通常水様で、マイコプラズマでも同様の症状が見られるため、鑑別の対象となる。
潜伏期は2-10日で吸入菌量と関係していると考えられている。病勢の進行は急速で致命率は5-15%。
静注用キノロンマクロライドが有効。これまで耐性菌は見つかっていない。
画像所見では肺炎球菌性肺炎と区別できないとされる。

レジオネラ症の90%以上は、Legionella pneumophilaであり、さらにその8割以上を血清群1に属する菌が占めている。
名前の由来は、「在郷軍人」(Legion)+「肺を好む」(Pneumophila)から。
マクロファージの殺菌に抵抗し、その中で増殖し、殺す能力を持っている(細胞内増殖能)

原核生物であるが、真核細胞に似た蛋白を30種類以上も産生することがゲノム解析の結果判明し、宿主の細胞機能を調節(e.g.食胞とリソソームの融合阻害)することによって生き延びようとする菌の戦略である可能性が考えられた。
Cazalet C Nat. genet. 36; 1165-1173, 2004

医学のあゆみ 2007 11/24