感染症

リネゾリドの特徴(バンコマイシンとの比較を含め)

■220例の成人を対象としたバンコマイシンとの比較研究では、MRSAによる軟部組織感染症とMRSA菌血症で、同等の効果が示された。 Stevens, DL, Herr, D, Lampiris, H, et al. Linezolid versus vancomycin for the treatment of methicillin- resistant Staphy…

移植後の好中球減少症

移植患者では、特に移植後比較的早い段階で、頻繁に好中球減少症を来しうる。 好中球減少症の原因は様々であるが、薬剤誘因性のものが最多である。原因となり得る薬剤として、 ・免疫抑制薬;ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、リツキシマブ、抗…

nosocomialの語源

"nosocomial infection"は院内感染と訳せますが、この"nosocomial"の語源はギリシア語の”nosokomeion; 病院"ということです。"nosos"が"disease"、"komeo"が"to take care of"の意味なのだそうです。敗血症のレビューを読んでいたら、たまたま目にした豆知識…

Tigecycline

NDM-1の記事で出てきた抗菌薬、チゲサイクリン(Tigecycline)について。ミノサイクリンの構造に側鎖を追加したもので、グリシルサイクリン(glycylcycline)系に分類される。 作用機序はミノサイクリンと同様で、細菌のリボゾーム30Sサブユニットに結合し、…

Principles of IL-6-type cytokine signaling

炎症反応に伴って放出されたIL-6は細胞表面のIL-6レセプターαとgp130に結合する。IL-6リガンドとレセプターとの相互作用の結果、活性化されたリン酸化酵素JAKによって、シグナル伝達因子STAT(特にSTAT3)のチロシン残基がリン酸化される。この結果STATは核…

Recurrent gram-negative bloodstream infection: a 10-year population-based cohort study

J. infect. 2010 61(1):28-33 米国ケンタッキー大学からの報告944例のグラム陰性桿菌(GNR)による血流感染症(BSI)を対象としたコホート調査。うち98例は再発例であった。 10年以内にGNRによるBSIを再発する頻度は14.6%であった。クレブシエラ属菌のほうが…

新種の細菌感染が拡大

産経ニュースで興味深い記事を読みました。 「新種の細菌感染が拡大 ベルギーで初の死者」出典はLancet Infectious Disease誌です。早速原文を読んでみました。"Emergence of a new antibiotic resistance mechanism in India, Pakistan, and the UK: a mole…

プロカルシトニンの偽陽性について

・新生児 ・急性呼吸促迫症候群(ARDS) ・急性熱帯熱マラリア ・全身性真菌感染症(カンジダ,アスペルギルス,他) ・重症外傷 ・外科的侵襲 ・移植における抗胸腺細胞グロブリンの使用 ・化学性肺炎 ・熱中症 ・重度熱傷 ・ホルモン産生腫瘍(甲状腺髄様癌,肺小…

リネゾリドの非結核性抗酸菌に対する効果について

リネゾリドが非結核性抗酸菌(NTM)に有効であったとする症例報告です。 概要を翻訳しました。Successful treatment of refractory disseminated Mycobacterium avium complex infection with the addition of linezolid and mefloquine. J Infect. 2002 Apr…

タイのウタイターニ県でトリインフルエンザが確認された

ProMed-mailの記事を翻訳しました。Bird flu detected in Thailand's Uthai Thani province - 家畜におけるトリインフルエンザのアウトブレイクが、タイ北部のウタイターニー県で明らかとなった。2008年11月13日に家畜部門の責任者は、事前に死亡した家畜の…

ジェニナックの抗酸菌に対する活性

”The MIC90s of T-3811 for M. tuberculosis and M. avium complex were 0.0625 and 16 µg/ml, respectively.” Antimicrob Agents Chemother. 1999 May;43(5):1077-84.ジェニナックのMACに対するMIC90は16 µg/mlという結果だったようです。 シプロキサンとク…

「ドイツで、今年1例目のトリインフルエンザを確認」

久々の更新です。ProMED-mailより、トリインフルエンザの話題を訳しました。「ドイツで、今年1例目のトリインフルエンザが確認された」 原題:Germany confirms 1st bird flu case this year 2008年10月10日 - ドイツの専門家は、高病原性トリインフルエンザ…

アスペルギルス症・概要

アスペルギルス症は、空中に飛散したアスペルギルス属の生分子を吸入することで肺に感染巣が形成される。 組織内の菌は、既存の組織構築とは無関係な菌糸性発育を示すとされ、病変の特徴は、菌の増殖部周囲の壊死と著明な出血である。 凝固壊死巣の中では多…

シプロフロキサシンは、経口で容易に吸収されるが、経静脈的にも投与可能である。半減期は4時間で、主に腎臓で除去される。 すべてのキノロン系薬は、同様の組織移行性を持ち、前立腺、糞便、胆汁、肺組織に濃縮される。これらの薬剤は、マクロファージや好…

中耳炎、副鼻腔炎の治療

副鼻腔炎、中耳炎の原因菌は肺炎とよく似ているが、もともと菌がある程度存在しているこれらの部位の場合、治療にあたって菌の殲滅を目標とする必要は無い。 アモキシシリン、オーグメンチンなどを使用。 (感染症外来の事件簿) [rakuten:book:11574278:det…

細菌性上気道炎の診断について

A群β溶血連鎖球菌の関与?CDCの基準 ①扁桃浸出液、白苔 ②前頸部有痛性リンパ節腫脹 ③熱発 ④咳がない...のうち、 4項目(+)→抗菌薬投与 2-3項目(+)→迅速診断キットを使用 0-1項目(+)→抗菌薬使用せず「日常診療のよろずお助けQ&A 100」P.110-111

蜂窩織炎

原因菌は主に... ・黄色ブドウ球菌 ・連鎖球菌 日本にはナフシリン、オキサシリンなど、”黄色ブドウ球菌に効くペニシリン”が存在しないので、セファゾリンなどを使用する。

エンテロコッカス属

形態上は連鎖状の球菌であり、D群抗原性を示すことから、かつて連鎖球菌属に入れられていたが、その後の研究で、1984年にエンテロコッカス属として分離独立した。 本属のヒトへの感染の約80%はE. faecalisであり、残りのほとんどはE. faeciumによる。尿路感…

抗菌薬の最新用量および副作用のまとめより

サンフォード感染症治療ガイド2006、表10Cより、面白いと思った部分を抜き出し。 ・PIPCはガラクトマンナン検査の偽陽性を起こすことがある。 ・カルバペネム系は持続静注のほうがより効果的かつ安全であることが示唆されている。 ・MEPMの抗菌活性は、好気…

プロカルシトニン(PCT)

アミノ酸116個からなる分子量13Kdaのペプチドで、 通常は甲状腺C細胞で合成される、カルシトニンの前駆体である。 細菌感染症では、TNF-αなどの炎症性サイトカインが産生され、 その刺激を受けて肺、腎、肝、脂肪細胞、筋肉といった全身の臓器で PCTが産生さ…

B. fragilis

クリンダマイシン、セファマイシン、メトロニダゾール、ペニシリン+βラクタマーゼ阻害剤、カルバペネム系薬に感受性の可能性がある。 最近、クリンダマイシン、セファマイシン系に耐性の株が報告されるようになってきている。 レジデントのための感染症診療…

PRSP

PRSPは”ペニシリン耐性”というよりも、 ”多少ペニシリンに対してMICが上がった”ものと理解する。 このため、通常の投与量で十分にそのMICを凌駕できる。 ただし、髄膜炎の場合は(移行の良い)第3世代セファロスポリンでないと、 髄液中の濃度でMICを上回る…

バンコマイシンの腎毒性

機序は不明であるが、バンコマイシンの投与を受けている患者の5%に腎不全が報告されている。 Lancet 1994; 344: 1748-1750 バンコマイシンの投与量との関係は明らかでない。 腎機能は通常、バンコマイシンの投与を中止すれば正常化する。 ICUブック第3版 P.7…

重症敗血症と敗血症性ショック

重症敗血症と敗血症性ショックは、感染が原因で多臓器障害をきたした状態である。 この2つの状態の唯一の違いは、敗血症性ショックにおける輸液療法に反応しない低血圧の存在である。 重症敗血症や敗血症性ショックは、末梢での酸素摂取能障害が特徴的であ…

感染、炎症、多臓器障害

炎症反応とは、加えられる侵襲から宿主を防御する作用である。しかし、宿主を損傷することもある。 炎症反応は、種々の宿主の組織を損傷する有害物質(タンパク分解酵素や酵素代謝物など)を産生する。この損傷は炎症によって産生された有害物質を抑制したり…

発熱患者

伝統的な正常体温である37℃は、19世紀後半に25000人の健康な成人の腋窩温に関する研究によって得られた平均値である。 高齢者では、若年者にくらべておよそ0.5℃低い。 正常体温は日内変動があり、早朝に最低値、午後遅くに最高値となる。発熱は炎症性の徴候…

肺炎球菌ワクチン

23種類の莢膜型の肺炎球菌を型別に培養し、殺菌後に抽出、精製した莢膜ポリサッカライドを混合したもの。 このワクチンの接種によって、含有するすべての莢膜型に対する抗体を誘導できることが臨床的に確認されており、我が国に分布する肺炎球菌莢膜型の約80…

腎盂腎炎の治療指針

Walter E. Stamm NEJM (329) p.1328-, 1993より抜粋急性非複雑性腎盂腎炎の臨床像は、グラム陰性菌による菌血症から、穏やかな側腹部痛を伴う膀胱炎様のものまで多彩である。 約80%以上がE.coliによるもので、その殆どが尿路に病原性を持った菌種である。 …

大腸菌

Escherichia(エシュリヒア) coli この属名は、1885年にこの菌を最初に分離したTheodor Escherichの名をとったものである。 もともとヒトや動物の腸管内常在菌の1つで、ビタミン類を産生して宿主に供給している。 病原因子の獲得により下痢をおこす下痢原…

自然免疫 概要

正常の健康な人にとって、毎日遭遇する微生物は目に見える病気をほんのまれにしか引き起こさない。多くの微生物は、短時間に発動される防御機構によって数分から数時間のうちに感知され撃退される。それは抗原特異的なリンパ球のクローナルな増殖を必要とし…