嫌気性菌感染症

菌の発育に際し、O2の存在が増殖を阻害する細菌の総称。通常の培養法では菌は発育しない。
嫌気性菌は自然界に広く存在し、皮膚、腸管内、口腔内に好気性菌よりはるかに多量に常在菌として存在している。
呼吸器感染症を生じる際は、口腔内から気道内へ落下し発症にいたることが多いため、内因性感染とも称せられる。
嫌気性菌肺炎では、培養の困難さから細菌学的診断を得ることはまれで、臨床的診断に留まらざるを得ないことが多い。

呼吸器感染の起炎菌種としては、
Fusobacterium
Prevotella
Peptostreptococcus …の頻度が高く、
Streptococcus, Bacteroides, Clostridiumなども分離される。

①嚥下性肺炎 aspiration pneumonia
②壊死性肺炎 necrotizing pneumonia
③肺化膿症 lung abscess
④膿胸 empyema
…の4疾患は、発症機序、感染源、起炎菌ともにおおむね同一であり、疾患の時期、重篤度の度合いを反映すると考えられている。
嚥下性肺炎が進展し、組織壊死が強まった病態を壊死性肺炎、
空洞形成を生じると肺化膿症、感染が胸腔内に波及すると膿胸

嚥下性肺炎の原因菌となる嫌気性菌は常在細菌であるから、病原性は通常高度ではない。
また、O2曝露下では発育しないことからも、感染の成立にはいくつかの条件が揃うことが必要である。
このため、通常は複数の嫌気性感染ないし、通性嫌気性菌との複合感染として発病する。
Streptococci(milleri group)は、嫌気性菌と相乗的に作用し、組織障害と感染の拡大を生じるとされる。
嚥下性肺炎では敗血症を生じることが少ないため、血液培養の価値は乏しい。