TNFーαの作用

マクロファージによって産生されるサイトカインは、局所作用として重要なだけでなく、生体防御に関わる遠隔作用も引き起こす。
これらの1つは体温の上昇で、主にTNF-α、IL-1、IL-6によって引き起こされる。
これらは内因性発熱物質と呼ばれ、細菌成分と異なり、内因性に発熱を誘導する。発熱は、一般に生体防御に有益である。①多くの病原体は、高い体温では増殖が抑制される一方、②適応免疫応答は高体温でより強く起こる。③さらに宿主細胞は、高体温の場合、TNF-αの副作用から守られる。

TNF-αは主に血管、特に細静脈に働き、①血流の増加、②血管からの体液・蛋白・細胞の透過性の亢進、③白血球・血小板の接着性の亢進をもたらす。
このようにTNF-αが局所で産生されると、感染防御に働く体液、蛋白、細胞が感染局所に動員される。
小血管では血液凝固がみられ、このために感染は局所にとどめられるとともに、局所からの体液は局所リンパ節に流入することになり、リンパ節では適応性免疫応答が始まる。

敗血症として知られる血流での感染は、肝臓、脾臓や他の部位に存在するマクロファージによるTNF-αの産生を伴う。
全身的なTNF-αの産生は、血管拡張と血管透過性増加による血漿量の低下、ひいてはショックを引き起こす。
敗血症性ショックにおいては、DICもTNF-αによって引き起こされ、多くの小血管で血栓の生成と凝固蛋白の大量消費が起こり、患者はうまく血液を凝固することができなくなる。この状態はしばしば、腎臓、肝臓、心臓、肺臓などの生命に重要な臓器の機能低下を引き起こし、速やかに正常な血流が低下するため、敗血症性ショックは死亡率が高い。

免疫生物学―免疫系の正常と病理

免疫生物学―免疫系の正常と病理

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  • 発売日: 2003/10
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