マクロライド系抗菌薬

マクロライドとは、巨大なラクトン環構造を有する化合物の総称であり、そのサイズは10員環から48員環まで極めて多様である。抗細菌性のマクロライド系抗菌薬は10員環から16員環の範囲に限られている。
国内で1984年に発表されたクラリスロマイシンは、それまでのマクロライド系抗生物質の常識を越えるいくつかの優れた特徴を有しており、ニューマクロライドと名付けられた。
クラリスロマイシン、ロキシスロマイシン、アジスロマイシン、ドリスロマイシンの4品目はいずれも酸性化に安定であり、経口投与により血中濃度が上昇し、持続することが特徴である。
クラリスロマイシンの例を挙げるならば、①血中濃度の上昇②半減期の延長③肺組織以降の増大④胃腸障害の軽減 ⑤尿中排泄の増大 などの特徴が、臨床効果を高めている。
さらにエリスロマイシンにおいて認められた抗菌力以外の各種の新しい生物活性が14員環のクラリスロマイシンとロキシスロマイシンおよび15員環のアジスロマイシンにも認められている。

マクロライドは50Sリボソームサブユニットと結合することで蛋白鎖の伸長を阻害する。
マクロライド系薬に対する耐性メカニズムは、プラスミドにコードされるリボソームRNAをメチル化する酵素の産生による。抗菌薬の作用点に対する結合の阻害である。

クラリスロマイシン、アジスロマイシンは、エリスロマイシンとほぼ同等の抗菌スペクトルを持つ。しかしアジスロマイシンはクラミジアに関して、より優れた抗菌活性を持っている。
アジスロマイシンもクラリスロマイシンも、非結核性抗酸菌に優れた効果を示し、エリスロマイシンよりも胃腸に対する副作用が少ない。

胸焼け、悪心、嘔吐といった消化器系の副作用はマクロライドで最もみられる副作用である。
カニズムとしては、エリスロマイシンがモチリンの受容体に結合し消化管の蠕動運動を高めるためと考えられている。
エリスロマイシンよりもその程度は低いが、胃腸症状はクラリスロマイシンやアジスロマイシンにおいても一番多い副作用である。
より希な副作用としては、肝毒性や聴器毒性がある。