肺アスペルギルス症の臨床像

”The Clinical Spectrum of Pulmonary Aspergillosis"
Ayman O et.al Chest 2002;121 1988-1999

アスペルギローマは、菌糸体、炎症細胞、フィブリン、粘液、壊死組織 …から成り、既存の空洞内で出来上がる。
1970年の調査によると、結核により空洞ができた患者でアスペルギローマを発症したのは11%であった。
空洞が形成される原因としては、結核が最多であり、その他サルコイドーシス、気管支拡張症、気管支嚢胞、ブラ、強直性脊椎炎、癌、肺梗塞などの原因があった。
(Kauffmann CA, 1996), (Zizzo G, 1996)
他の真菌症による空洞でのアスペルギローマ形成も報告がある。
通常、真菌は周囲の肺組織、血管へは浸潤しない(Tomee JF, 1995),( Rafferty P, 1983)
約10%で治療無しでも自然退縮し、まれにサイズが増大する。
症状無しでも、何年も存在しうる。
ほとんどの患者が軽度の喀血を経験するが、重度の喀血は結核を基礎疾患として持つ患者に多い(Faulkner SL, 1978)
出血は通常、気管支血管から起きる。
喀血の原因は、理論的には空洞内の血管の障害、血管障害性のエンドトキシン、空洞壁の血管へのアスペルギローマの機械的な摩擦…が考えられた。
(Tomee JF, 1995), (Addrizzo-Harris PJ, 1997), (Aslam PA, 1971)
喀血による死亡率は、2-14%の範囲であった。
他の症状としては、慢性咳嗽、呼吸苦があるが、基礎疾患によるものと考えられている。
熱発は、二次性の細菌感染が無ければ稀である。
予後不良因子としては、①重篤な基礎疾患、②サイズ、数の増大、③免疫抑制状態、④アスペルギルス特異的なIgG値の上昇、⑤くりかえす喀血、⑥サルコイドーシスの合併、⑦HIV感染の合併…が挙げられる。