大腸菌

Escherichia(エシュリヒア) coli
この属名は、1885年にこの菌を最初に分離したTheodor Escherichの名をとったものである。
もともとヒトや動物の腸管内常在菌の1つで、ビタミン類を産生して宿主に供給している。
病原因子の獲得により下痢をおこす下痢原性大腸菌や、腸管以外の部位(髄膜や尿路)に感染を起こすものがあり、総じて病原大腸菌と呼ばれる。
ブドウ糖を発酵により分解して酸とガスをつくり、大多数の菌株は、乳糖を分解してやはり酸とガスをつくる。
O、K、Hの3種類の抗原の組み合わせによって分類される。
アンピシリン耐性化が進んでいるので、市中感染症においても経験的治療としてアンピシリンを使用できない。
第2,3,4世代セファロスポリン系、キノロン系、モノバクタム系、カルバペネム系、アミノグリコシド系…への耐性は、10%以下である。

<尿路病原性大腸菌
uropathogenic E. coli (UPEC)
膀胱炎、腎盂腎炎など尿路感染症の80%が大腸菌によるもので、血清型には特定のもの(01, 02, 04, 06, 075など)が多い。
また、α-hemolysin産生株が高率に分離される。
尿路感染には定着因子が必要で、
Pap(pili associated with pyelonephritis)線毛、S(sialic acid)線毛、type1線毛など、下痢原性大腸菌の定着因子とは異なる線毛を発現している。

戸田新細菌学 P.535-541
ハリソン内科学 P.991

戸田新細菌学 改訂33版

戸田新細菌学 改訂33版

ハリソン内科学

ハリソン内科学