ダルナビル/リトナビルはロピナビル/リトナビルにくらべてHIVの抑制効果が優れていた

先日のICAAC/IDSAで、ダルナビルの初回治療における有効性に関する発表がありました。以下、要約です。

HIV未治療群を対象とした臨床試験の結果、ダルナビル/リトナビルは他のHIV治療薬との併用により、ロピナビル/リトナビルを使用した群と比べて、すぐれた効果を示したとする研究結果が、第48回米国微生物学会(ICAAC)/第46回米国感染症学会(IDSA)合同の年次総会で発表された。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の主任研究者、アンソニー・ミルズ医師は、「1日1回服用のダルナビル/リトナビルによって、HIV未治療患者にとって、新たに、より効果的で耐用性にすぐれた選択肢が得られた」と話している。
TMC114(ダルナビル)によるHIV未治療者を対象とした第3相の無作為試験、ARTEMIS試験は、192週の間、プロテアーゼ阻害薬であるダルナビルとロピナビルの効果と安全性を比較した試験である。689例が登録され、343例がダルナビル服用群に、346例がロピナビル服用群に割り付けられた。参加者は、固定された用量のヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤エムトリシタビンと、ヌクレオチド系逆転写酵素阻害剤テノフォビルを、同時に服用した。
HIV未治療者に対し、1日1回800/100 mgを服用するダルナビル/リトナビル群は、ロピナビル/リトナビル群と比較して非劣性であっただけでなく、統計学的に優れていた」と、ミルズ医師は10月26日のポスター掲示で示した。96週の時点で、ダルナビルを服用していた成人群の79%が、ウイルス量の検出限界以下(50コピー/mL未満)を達成した。一方、ロピナビル服用群(800/200 mg)では、71%であった(P = .012)。ミルズ医師によると、96週時の結果から示されたダルナビルの効果は、ウイルス量が多い患者、あるいはCD4陽性細胞数が少ない患者で、最も発揮されていた。さらに、ロピナビル/リトナビル服用群と比べ、ダルナビル/リトナビルでは副反応による治療中断例がより少なかった。ダルナビルを加えた併用療法は下痢の頻度が少なく、中性脂肪と総コレステロール値の上昇が平均してわずかであった。

[演題名:ARTEMIS: Efficacy and Safety of Darunavir/Ritonavir (DRV/r) 800/100 mg Once-Daily Vs Lopinavir/Ritonavir (LPV/r) in Treatment-Naïve, HIV-1-Infected Patients at 96 Weeks. Abstract H-1250c]

ジェニナックの抗酸菌に対する活性

”The MIC90s of T-3811 for M. tuberculosis and M. avium complex were 0.0625 and 16 µg/ml, respectively.”
Antimicrob Agents Chemother. 1999 May;43(5):1077-84.

ジェニナックのMACに対するMIC90は16 µg/mlという結果だったようです。
シプロキサンとクラビットは、いずれも8 µg/mlでした。
なお、ジェニナックのM. tuberculosisに対するMIC90は、0.0625 µg/mlと良好なようです。

「ドイツで、今年1例目のトリインフルエンザを確認」

久々の更新です。ProMED-mailより、トリインフルエンザの話題を訳しました。

「ドイツで、今年1例目のトリインフルエンザが確認された」
原題:Germany confirms 1st bird flu case this year
2008年10月10日

                                                                                      • -

ドイツの専門家は、高病原性トリインフルエンザが国内の東部で確認されたと発表した。ドイツ東部のザクソン州政府によると、ドレスデン近郊の農場で、家畜のアヒルからH5N1トリインフルエンザが検出された。「検査の結果、感染性の強いH5N1ウイルスが検出された」と、ザクソン社会福祉省の責任者は語った。インフルエンザは農場の定期検査で検出され、その農場では1400匹の鳥が飼育されていたが、すべての鳥が予防のために処分された。さらに半径3kmの検疫地帯と、半径10kmの観察地帯が定められ、その中ではすべての家畜が建物内に収容された。トリインフルエンザがドイツで前回検出されたのは、2007年の12月であった。「州の当局はトリインフルエンザを制圧する責任がある。現在、リスクレベルを評価しており、EUを含む国際機関と近隣の国には、すでにこの件について知らせてある」と、農務省のスポークスマンは強調した。

「プロの仕事術」より抜粋

熊谷正寿氏「悩むという心理はほとんどの場合、「失敗したらどうしよう」という恐怖心から来ています。だから、迷ったときは最悪の結果を想定し、それに自分は耐えられるかどうか自問自答してみる。するとたいてい、「大丈夫、これでいこう」となるんです。悩んでいる時間は非常にもったいないので、そういくことが自然にできるように、心の訓練をすることはとても大事ですね。

<決定版> プロの仕事術

<決定版> プロの仕事術

ラルテグラビルの効果と安全性

NEJM7月24日号に、インテグラーゼ阻害剤、ラルテグラビルに関する論文が2本続けて掲載されています。
1本目は、BENCHMRK-1、BENCHMRK-2という2つのスタディの結果をまとめたものです。

「耐性HIV-1感染に対するラルテグラビルと至適基礎療法」
Raltegravir with optimized background therapy for resistant HIV-1 infection.

背景:ラルテグラビルはヒト免疫不全ウイルス1 型(HIV-1)のインテグラーゼ阻害薬で、従来の抗レトロウイルス薬に感受性あるいは耐性を示すHIV-1に対して活性を有する。

方法:今回は、ラルテグラビルの安全性と有効性を評価するため、2つの同じ試験を、異なる地域で行った。3つの異なるクラスの抗ウイルス薬に対して耐性のHIV-1に感染し、治療が失敗した患者を対象とし、至適治療を併用したうえでプラセボ群との比較がなされた。

結果:2つの試験を合わせて,無作為化された患者 703 例中 699 例(ラルテグラビル群 462 例,プラセボ群 237 例)が試験薬の投与を受けた.2 つの試験の結果は一貫しており、いずれの試験においても、ラルテグラビル群はプラセボ群に対して優位に優れたウイルス抑制効果を示した。薬物に関連した有害事象の発現頻度は,ラルテグラビル群とプラセボ群で同程度であった.

NEJMのサイトで全文が読めますので、ご興味のあるかたはどうぞ↓。
http://content.nejm.org/cgi/content/full/359/4/339

ラルテグラビルは、これまでと異なる作用機序を持つことから、大きな期待を集めていますが、これまでのところ、効果、安全性ともに優れているようです。今後、初回治療などにも適応が拡大してくると、使用頻度の増加に伴い、思わぬ副作用の発現に注意する必要があるかもしれません。